西山・下出法律事務所
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事業者のための労働法・労働者派遣法

第11 懲戒処分

1 懲戒処分が有効と認められる要件

(1)就業規則上の明確な規定(懲戒処分事由と懲戒処分の定め)の存在

(2)懲戒処分事由に該当すること

(3)懲戒処分の相当性
当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする(労働契約法15条)。

職場規律の維持の上で必要かつ合理的な範囲内であること。
労働者の非違行為が懲戒処分と間で必要かつ合理的である必要があり、また、プライバシーの侵害を伴うような措置(例:合理的な必要性のない所持品検査など)が前提とならないことが必要である。

(4)適正手続
本人への弁明機会付与は最低限必要。
その他、懲戒委員会の開催や労働組合等との協議など。

2 懲戒事由

(1)職務懈怠

無断欠勤、遅刻、早退、職場離脱、職務不良、業務命令違反など

(2)職場規律違反

暴行、脅迫、セクハラ、業務妨害、横領、背任、収賄など

(3)経歴詐称

労働力の評価を誤らせ、労使の信頼関係や賃金体系・人事管理を混乱させる危険があることから、具体的な実害の発生を問わず企業秩序違反となり、懲戒解雇事由になるとした判例も多い(最高裁判決平成3年9月19日)。

(4)社内政治活動・組合活動

施設管理を妨げ、従業員間の対立をもたらす企業秩序を乱すおそれのある場合。

具体的には、@態様(平穏か否か)、A経緯、B目的(会社攻撃目的か、市民活動目的か等)、C内容(誹謗中傷の類か否か、内容が真正か否か等)などを総合的に判断する。

(5)社外での犯罪行為

当該行為の性質・情状、会社の事業の種類・規模、労働者の地位等を総合して、会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合に限られる(最高裁判決昭和49年3月15日)。

(6)社外における会社批判・告発行為

公益通報者保護法による場合は懲戒事由とならない。

そうでない場合、ほぼ真実と合致し、または信じるにつき相当の理由がある場合は、懲戒事由とならない。

(7)企業情報の漏洩

(8)兼業・競業行為

企業に現実に損害を与えたり、企業の信用を現実に低下させる等の場合。

3 処分の種類

(1)始末書

不提出を理由に処分することはできない。

(2)戒告

(3)減給

1回について一日の平均賃金の半分、総額について一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えることはできない(91条)。

ただし、この10分の1を超える部分を次期に延ばすことは認められている。

また、賠償予定は禁止されている(16条)。

(4)出勤停止

通常給与が支給されず、勤続年数にも通算されない。

→ 相当性には厳しい判断。

  せいぜい1週間程度か?

(5)自宅待機

通常給与が支給される自宅待機の場合は、出勤に停止に比し認められやすいが、それでも業務上に必要性があり、不当に長期にわたらないことが必要。

(6)降格

(7)諭旨退職

退職願・辞表の提出を勧告し、これに従って退職することにより、通常、解雇の形をとらず、退職金等の支払いをするもの。

(8)懲戒解雇

解雇しなくてはならないといえるだけの重大な義務違反、業務阻害や職務規律上の実害がある場合。

無断欠勤であれば、少なくとも2週間以上。

※ 退職金の不支給の是非については、前述第9の2参照。

※ 解雇予告手当の不支給の是非については、前述第10の5参照。

 

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